基礎科目概要
技術士一次試験の出題分野は以下の5つの群に分かれる。
- 設計・計画に関するもの:設計理論、システム設計、品質管理など
- 情報・論理に関するもの;アルゴリズム、情報ネットワークなど
- 解析に関するもの:力学、電磁気学など
- 材料・化学・バイオに関するもの:材料特性、バイオテクノロジーなど
- 環境。エネルギー・技術に関するもの:環境、エネルギー、技術史など
それぞれに対して6問ずつ出題され、3問ずつの解答が要求される(15問/30問)。合格条件は50%であり、過去問題の類似問題が多い。このため、過去問題の出題系統に着目して、必要な知識を身につけることが要求される。
3. 解析
3.1. 解析
- マクロ的な解析手法
- 差分法(FDM; Finite Defference Method):微分を差分に近似することで、非線形問題も解くことが可能。格子間隔の大きさに応じて誤差が変わる。幾何学的形状を識別することは困難であるため、境界条件の扱いが難しい
- 有限要素法(FEM; Finite Element Method) : 微分を積分に近似し、領域内を多くの小領域に分割することで計算を行う。複雑な領域にも適用可能なので、境界条件の設定は容易。
- 境界要素法(BEM; Boundary Element Method) : 領域境界を分割し、境界積分を行うことで、境界を多数の要素に分割して離散化を行う。あまり使われない。
- 逆解析手法・最適化手法
- 逆問題:出力から入力を求める問題。これを解くための手法が逆解析手法/最適化手法
- 定量的非破壊検査:逆解析の一つ。構造物や、機械の固体部分に超音波を入射し、内部の欠陥や亀裂などによる反射波や散乱波を測定。
3.2. 一般力学、固体力学
-
ばね定数
- ねじりばね:円盤を$\theta$だけねじるのに要する力のモーメント$M$は
$$
M=K\theta
$$
である。 - 密巻コイル(引っ張り、圧縮)のばね定数は
$$
k = \frac{Gd^3}{8nD^3}
$$
Gは横断性係数、dはコイル線径、nは巻数、Dはコイル巻径
- ねじりばね:円盤を$\theta$だけねじるのに要する力のモーメント$M$は
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ひずみエネルギー
- 物体が外力を受けて変形する際の外力のなす仕事。外力による応力の値が物体の弾性限界以下であると弾性ひずみを生じ、ひずみエネルギーは全て位置エネルギーとして物体内に蓄えられる→弾性ひずみエネルギー
- 応力が弾性限界を超えると永久ひずみを生じ、エネルギーの大部分は熱エネルギーとして散逸し、残りの部分は物体内のゆがんだ結晶格子に蓄えられる。
- $P$を荷重、$\lambda$を軸方向の伸縮量、$L$を棒の長さ、$\bar{U}$を棒全体のひずみエネルギー、$U$を棒の単位体積あたりのひずみエネルギー、$E$をヤング率、$A$を横断面積、$\sigma$を垂直応力とすると、ひっぱり圧縮ひずみエネルギーは
$$
\begin{array}{l}
\bar{U} = \frac{P\lambda}{2}=\frac{P^2L}{2AE}=\frac{\sigma^2LA}{2E}\
U=\frac{\sigma^2}{2E}=\frac{E\epsilon^2}{2}
\end{array}
$$
となる。ただし、$\epsilon$は縦ひずみである。 - また、$F$をせん断力、$G$を横弾性係数、$\tau$をせん断応力、$\gamma$を剪断ひずみとすると、剪断弾性ひずみエネルギーは
$$
\begin{array}{l}
\bar{U}=\frac{F\lambda}{2}=\frac{F^2L}{2AG}=\frac{\tau^2LA}{2G}\
U=\frac{\tau^2}{2G}=\frac{G\gamma^2}{2}
\end{array}
$$
となる。
-
フックの法則
- 物体の応力とひずみの関係を表す法則
- $\epsilon,\ \gamma$をひずみ成分、$\sigma,\ \tau$を応力成分をすると、
$$
\begin{array}{l}
\epsilon_i = \frac{\sigma_i-\nu(\sigma_j+\sigmak)}{E}\qquad(i,j,k={x,y,z})\
\gamma{ij} = \frac{\tau_{ij}}{G}
\end{array}
$$
ここで$E$は縦弾性係数/ヤング係数、$G$は横弾性係数/剪断弾性係数/剛性率、$\nu$はポアソン比。
3.3. 熱流体力学
- フーリエの式:熱量の伝導
$$
dQ=-\lambda\frac{\partial T}{\partial n}dsdt
$$
上記の式は物体内に面積$ds$を考え、伝道により、$dt$時間内に$ds$を横切って$a$から$b$の方向に流れる熱量$dQ$を表している。$\lambda$は熱伝導率。 - 熱伝導基礎方程式
$$
\rho c \frac{\partial T}{\partial t}=\frac{\partial}{\partial {\bf x}}\left(\lambda\frac{\partial T}{\partial {\bf x}}\right)
$$
ただし、$\rho$は密度、$c$は比熱、$\lambda$は熱伝導率。 - 自由膨張を拘束されることによる熱応力:$n(n=1,2,3)$軸拘束は熱応力を$\sigma_x,\sigma_y,\sigmaz$とすると、
$$
\sigma{{x,y,z}}=-\frac{\alpha E\Delta T}{1-n\nu}
$$
となる。ただし、$\alpha$は線膨張係数、$E$は縦弾圧係数、$\Delta T$は温度変化、$\nu$はポアソン比を表す。 - 流れの場の時間変化方程式
流体速度を$v=v(x,y,z,t) = (u,v,w)$、密度を$\rho = \rho(x,y,z,t)$とすると、質量の時間変化に関する方程式は
$$
\frac{\partial\rho}{\partial t}+\frac{\partial(\rho u)}{\partial x}+\frac{\partial(\rho v)}{\partial y}+\frac{\partial(\rho w)}{\partial z}=0
$$
となる。この方程式は密度$\rho$が変化する圧縮流体と、$\rho$=一定の非圧縮流体の場合に用いられる。
3.4. 電磁気解析
- 技術士補一次試験の範囲内ではあるが、過去に出題されたことはない。
- 技法としては差分方、有限要素法、境界要素法のほかにもFITD法(時間領域差分法:Finite Difference Time Domain)やCIP法(Constrain INterpotation Profile)が使用されている。
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