基礎科目概要
技術士一次試験の出題分野は以下の5つの群に分かれる。
- 設計・計画に関するもの:設計理論、システム設計、品質管理など
- 情報・論理に関するもの;アルゴリズム、情報ネットワークなど
- 解析に関するもの:力学、電磁気学など
- 材料・化学・バイオに関するもの:材料特性、バイオテクノロジーなど
- 環境。エネルギー・技術に関するもの:環境、エネルギー、技術史など
それぞれに対して6問ずつ出題され、3問ずつの解答が要求される(15問/30問)。合格条件は50%であり、過去問題の類似問題が多い。このため、過去問題の出題系統に着目して、必要な知識を身につけることが要求される。
5. 環境・エネルギー・技術
5.1. 環境
地球環境問題
- IPCC(機構変動制俯瞰パネル)
- 1988年、国連環境計画と世界気象機関により設立。5〜6年ごとに評価報告書を発表している。
- 京都議定書
- 1997年の京都会議(COP3)で温室効果ガスの排出に関する数値目標を京都議定書として採択。2005年2月に発令。ただし、アメリカの離脱や中国などの不参加などの課題あり。
- 日本は数値目標として6%となっていたが、2013年以降不参加。
- 法的拘束力あり
- オゾン層の破壊
- 有害な紫外線を吸収・カットしている
- ウィーン条約やモントリオール議定書
- 酸性雨
- pH=5.6以下の雨。窒素酸化物や硫黄酸化物などが硝酸、硫酸などとなって雨雲に取り込まれて溶解している。
廃棄物問題と循環型社会の形成促進
- マニフェストシステム
- 廃棄物を排出する事業者は、その事業活動によって生じた産業廃棄物を自らの責任において処理しなければならない(汚染者負担の減速:PPP)。排出事業者はマニフェスト(産業廃棄物管理票)により流れを管理し、適正な処理を履行する。
- リサイクル法
- 容器包装リサイクル法
- ペットボトル、ガラス製容器、プラスチック製容器包装、紙製容器包装の4品目について特定事業者にリサクルを義務付けている
- 家電リサイクル法
- 特定家庭用機器として、エアコン、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、冷凍庫について消費者が購入時にリサイクル費用を負担することを義務付ける法律
- 食品リサイクル法
- 建設(資材)リサイクル法
- 自動車リサイクル法
環境配慮
- 環境マネジメントシステム(ISO14001)
- 企業などの組織が環境問題への取り組みを体系的に実行してくための仕組み
- PRTR(Pollutant Release & Transfer Register)
- 環境汚染物質排出・移動登録。指定された化学物質については、環境へ排出される両および他へ移動する両を自主的に把握して報告する義務
5.2. エネルギー
エネルギー資源
- 石油資源:地下に埋蔵された石油系炭化水素。原油、天然ガスなど。
- 天然ガス;地下に埋蔵された炭化水素を主成分とする可燃性ガス。
- メタンハイドレード:水の結晶の中に、メタン分子が包接されている氷状化合物。
- タイトサンドガス:1980年代に注目
- シェールガス:2000年代に注目され、生産が顕著に拡大。
- 核燃料:天然に存在する核燃料はウラン、トリウム、重水素。プルトニウムはウランから生成される。
- 水力エネルギー
- 地熱エネルギー:現在、最も利用されているのは深度3km以下の深部地熱。
- 太陽エネルギー:地表付近で$1.0{\rm kW}/{\rm m}^2$のエネルギー
- 風力エネルギー:
$$
P = \frac{1}{2}mV^2 = \frac{1}{2}\rho AV^3
$$
P:風力エネルギー、m:空気の質量、V:風速、$\rho$:空気の密度、A:風車ロータの回転面積- 変換効率の理論的上限は約59\%。
- バイオマスエネルギー:生物起源の資源。
- 海洋エネルギー:波力発電や潮汐発電など実験中。
エネルギー技術
- 火力発電:コンバインドサイクル(ガスタービンによる発熱を行い、その排熱で蒸気タービンの発電を行う)。結果として、単独では43\%の熱効率を53\%程度まであげている。
- 燃料電池
- 固体高分子型:自動車など。小型化が可能かつ、起動・停止が容易。
- リン酸型:出力規模が50~10000kWと同じように水素イオンを伝導イオンとする固体高分子型(1~250kW)よりも大きい。
- 溶解炭酸塩型:炭酸イオンを伝導イオンとすることで、数千〜数十万kWの出力が可能
- 固体酸化物型:家庭用にも用いられる。出力規模は溶解炭酸塩型と同程度
- ダイレクトメタノール型:出力規模は0.1kW~と小さいが、携帯機器などに用いられる。
- コジェネレーション:発電設備と熱供給設備を併せ持つシステム。燃料による発電と、排熱を利用して空調などの熱利用をする。熱効率は65~85\%程度になる。
- ヒートポンプ:河川水や空気などを熱源として、そこから熱を組み上げてゆうような高温の熱を生成する。
- 成績係数:ヒートポンプの性能の指標
$$
COP = \frac{入力エネルギー+くみ上げエネルギー}{入力エネルギー}
$$
- 成績係数:ヒートポンプの性能の指標
5.3. 技術史
近代化学技術の進展とその特徴
- 産業革命時代(1760~1840年)
- 蒸気機関、紡績機、力績機など
- 紡績機により無機化学の技術が生み出される
- 主にイギリスで発展
- 技術開発・拡大時代(1840~1930年)
- 有機化学工業が発展
- 内燃機関(自動車)や電気(電話)など機械の量産が始まる
- ドイツ・アメリカ・フランスでも技術が生み出される
- 技術革新と応用技術開発時代(1930~1990年)
- アメリカが主体
- ナイロン、テレビジョン、コンピュータ、ペニシリン、原子力、ジェットエンジン、トランジスタなど
- 高度情報化社会(1990~)
科学技術の進歩
- 科学技術基本法
- 第一期(H.8):政府研究開発投資の拡充
- 第二期(H.13)
- 3つの理念
- 知の創造と活用により世界に貢献できる国
- 国際競争力があり持続的発展ができる国
- 安心・安全で質の高い生活のできる国
- 資金の選択的・重点的投入
- ライフサイエンス
- 情報通信
- 環境
- ナノテクノロジー・材料
- 第三期(H.18)
- 基本姿勢
- 社会・国民に支持され、成果を還元する科学技術
- 人材育成と競争的環境の重視〜モノから人へ、機関における個人の重視
- 計画期間中に集中投資を必要とする「戦略重点科学技術」の選定を行う
- 第四期(H.23)
- 中長期的な目標
- 震災からの復興・再生・持続的な成長と社会の発展
- 安全かつ豊かで、質の高い国民生活
- 大規模自然災害など、地球規模の問題解決への取り組み
- 国家在立の基盤となる科学技術の保持
- 知の資産を創出し、科学技術を文化として育む
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